コンテンツマーケティングとは?取り組むメリットや始め方、注意点を解説
近年、コンテンツマーケティングに注力する企業が増えています。見込み客とコミュニケーションを図る手法として浸透しつつある一方で、コンテンツマーケティングという言葉が指し示す範囲は幅広いことから、具体的に何を表しているのかよくわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。
今回は、コンテンツマーケティングの定義やコンテンツSEOとの違い、求められているコンテンツの特徴について解説します。また、コンテンツマーケティングに取り組むメリットと具体的な始め方、取り組む際の注意点にも触れていますので、マーケティング施策を検討する際にぜひ役立ててください。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、有益な情報を提供することにより見込み客との信頼関係を深めるマーケティング手法のことです。活用されるコンテンツの具体例やコンテンツマーケティングに取り組む目的、近年注目されている理由について押さえておきましょう。
コンテンツの具体例
コンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」には、さまざまなものが想定されます。たとえば、文字ベースで構築されたWebサイトの記事、動画、ソーシャルメディア、メールなどは、いずれもコンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」の一例です。
「読者にとって有益な情報を届けられる」という条件を満たしていれば、コンテンツの形式は問いません。まずは、コンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」の裾野が非常に広いことを押さえておきましょう。
コンテンツマーケティングの目的
コンテンツマーケティングに取り組む最大の目的は「見込み客の態度変容を促すこと」です。商品やサービスを直接的に売り込むのではなく、関連するテーマについて有益な情報を提供し、見込み客の信頼を獲得していくことが求められています。
たとえば、クラウド会計ソフトを開発・販売する企業の場合を考えてみましょう。オウンドメディアなどを訪問する見込み客は、この企業が提供しているクラウド会計ソフトにはじめから興味をもっているとは限りません。経理や財務、税金などに関する情報を収集したり、知識を身につけたりしたいと考え、「仕訳」「インボイス制度」「所得税」といったキーワードでWebサイトを検索します。こうした情報を提供しているWebサイトの1つとして企業が運営するオウンドメディアを訪問し、有益な情報を得られたと感じることにより、メディアやその運営会社に対する信頼が徐々に高まっていくのです。このように情報提供を通して見込み客の信頼を獲得し、将来的に自社商品の購入や契約を検討してもらうことがコンテンツマーケティングの目的といえます。
コンテンツマーケティングが注目される理由
では、商品を直接的に売り込まないコンテンツマーケティングの手法がなぜ注目されているのでしょうか。その大きな理由として、広告に頼った集客モデルに限界が訪れつつあることが挙げられます。
インターネット広告費が高騰したことや、多くのユーザーがインターネット広告を見慣れてしまったことにより、広告による集客モデルでは十分な費用対効果が期待できなくなっています。現状は自社の商品やサービスを認知していない・興味をもっていない潜在顧客を掘り起こし、顧客へと育成していく必要性が増しているのです。従来の広告モデルに頼らない集客の新たな手法として、コンテンツマーケティングに注目が集まっていると捉えてよいでしょう。
コンテンツSEOとの違い
コンテンツマーケティングとしばしば混同される言葉の1つに「コンテンツSEO」が挙げられます。コンテンツSEOとは、検索エンジン経由でWebサイトへの流入を促進し、集客することを目的としたマーケティング手法です。WebサイトにSEO対策を施し、検索結果の上位表示を目指すことを指しています。
コンテンツマーケティングの中でも、SEO施策によってユーザーとの接点を築いていく手法がコンテンツSEOに相当します。よって、コンテンツSEOはコンテンツマーケティングを成功させるための手法の1つといえるでしょう。コンテンツSEOがコンテンツマーケティング施策に含まれていることはあるものの、コンテンツSEO=コンテンツマーケティングではない点に注意してください。
コンテンツマーケティングに求められるコンテンツとは
コンテンツマーケティングには、どのようなコンテンツが求められているのでしょうか。読者にとって役立つ情報を提供するには、次のようなコンテンツを提供していく必要があります。
買い手にとって有益な情報を届けるためのコンテンツ
自社が市場に供給する商材と関わりの深いテーマのうち、とくに買い手が求めている可能性の高い情報は、コンテンツマーケティングで提供すべきコンテンツといえます。前述のクラウド会計ソフトの例であれば、潜在顧客が抱えているのは「経理の負担を軽減したい」「適格請求書を抜け漏れなく発行したい」といった課題でしょう。課題解決につながる有益な情報を提供することにより、潜在顧客はそのメディアに信頼を寄せるようになるはずです。
反対に、クラウド会計ソフトの機能や他社製品との比較といった情報をどれだけ提供しても、潜在顧客は自身の課題が会計ソフトというプロダクトによって解決できると捉えていない可能性があります。まずは有益な情報を提供し、興味関心をもってもらうことが重要です。
買い手の購買意欲を高めるコンテンツ
潜在顧客が抱えている課題を解決する上で、なぜ自社の商材が役立つのかといった情報も、コンテンツマーケティングで発信していくべきコンテンツといえます。商材が必要とされる背景や、活用して役立つシーンに関わりの深い情報を発信することにより、潜在顧客自身も気づいていなかったニーズを引き出せるからです。
一般的に、買い手の購買意欲は下表の4段階に分けられます。「まだまだ客」を「そのうち客」に引き上げていくには、買い手にとっての課題と自社商材をつなぐ道筋を示していく必要があるでしょう。
購買意欲の段階 | 顧客の状況 |
---|---|
まだまだ客 | 課題を抱えているものの、解決する必要性を強く感じていない。 |
そのうち客 | 課題を解決したいと思っているが、さほど緊急性を感じていない。 |
お悩み客 | 課題を解決する必要性を感じており、どの商品を選ぶべきか迷っている。 |
今すぐ客 | 課題を解決するために、商品をすぐにでも必要としている。 |
買い手の意思決定を促進するコンテンツ
買い手の購買意欲の段階に応じて「今すぐ客」へと近づけるための情報も、コンテンツマーケティングに求められるコンテンツといえます。具体的なコンテンツの例は次の通りです。
変容を促したい購買意欲 | コンテンツ例 |
---|---|
まだまだ客→お悩み客 |
自身の願望や欲求に気づいてもらうためのコンテンツ
例:ユーザーの声・成功事例 |
お悩み客→今すぐ客 |
悩みや課題を解決するための手段を解説するコンテンツ
例:商品比較・人気ランキング |
そのうち客→今すぐ客 |
商材がもたらすメリットを訴求するコンテンツ
例:商材の活用事例・効果や成果の具体例 |
買い手の購買意欲は常に揺れ動いており、決定打となる情報に出会ったことで購入に至るケースは決して少なくありません。このように、買い手の「背中を押す」ためのコンテンツも投入していく必要があるでしょう。
コンテンツマーケティングに取り組むメリット
コンテンツマーケティングに取り組むことで、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主なメリットとして次の4点が挙げられます。
潜在顧客の発掘につながる
ユーザーにとって役立つ情報を提供することにより、今すぐに商材を購入するつもりがない・購入を意識していない潜在層とも接点を作れる場合があります。商品名やサービス名で直接的に検索する可能性の低い潜在顧客を発掘し、見込み客へと引き上げる効果が期待できるでしょう。
提供されている情報が有益なものと判断した潜在顧客は、Webサイトなどを繰り返し訪問するようになります。コンテンツを提供している企業に対する信頼性が徐々に高まっていくことで、実際に商品を購入する際には選択肢の筆頭に挙がる確率が高まるのです。このように、潜在顧客の発掘につながることは、コンテンツマーケティングに取り組むメリットの1つといえるでしょう。
広告費を節減できる
コンテンツを通して見込み客の購買意欲を高めていくことができれば、高いニーズのある見込み客に対して集中的にアプローチしやすくなります。ニーズの有無が見えていない不特定多数の潜在顧客にアプローチする場合と比べて、広告費をピンポイントで投入しやすくなるでしょう。
広告効果が高まることにより、必然的に広告費の削減にもつながります。十分に集客力のあるコンテンツやメディアを構築できれば、ほとんど広告費をかける必要がない状況を作り出していくことも可能でしょう。このように、コンテンツマーケティングに取り組むことで広告費の節減効果が期待できるのです。
買い手のエンゲージメントが高まる
コンテンツを通して見込み客とコミュニケーションを図ることにより、企業に対する見込み客の信頼が高まっていきます。信頼関係が築かれた状態で購入に至った顧客は、購入後も引き続き商材の提供企業に対して信頼を寄せていくはずです。
顧客エンゲージメントを高めることによって、良質なレビューや口コミがSNSなどに投稿されやすくなります。自社に対して好意的な印象をもつ見込み客を無理なく増やし、ファンを育成していくことができるでしょう。このように、買い手のエンゲージメントが高まることはコンテンツマーケティングに取り組むメリットの1つといえます。
長期的な効果が期待できる
コンテンツマーケティングの大きなメリットとして、制作したコンテンツが自社の資産になっていくことが挙げられます。良質なコンテンツが蓄積されていけば、長期にわたって集客効果を発揮する可能性も十分にあるでしょう。
広告施策によっては、広告費の投入を停止した時点で集客効果が得られなくなるケースも少なくありません。一方、コンテンツマーケティングの場合は公開済みのコンテンツを削除しない限り、集客効果を発揮し続ける可能性を秘めています。このように長期的な効果が期待できる点は、コンテンツマーケティングだからこそ実現できるメリットの1つです。
コンテンツマーケティングの始め方
コンテンツマーケティングを始めるには、どのような手順で取り組めばよいのでしょうか。具体的にやるべきことを確認しておきましょう。
コンテンツマーケティングに取り組む目的を明確にする
自社が現在どのような課題を抱えているのか、その課題をコンテンツマーケティングによってどう解決したいのか、といった目的を明確にしておきましょう。コンテンツマーケティングに取り組む目的によって、講じるべき施策やコンテンツ制作の方向性も大きく異なるからです。
たとえば、有効なリードが不足しており、リード獲得を増強することがコンテンツマーケティングに取り組む目的であれば、資料ダウンロードや問い合わせ数を増やすための施策が必要になるでしょう。サービス契約後の継続率を改善したい場合は、契約前後に顧客との関係性を深化させるためのコンテンツマーケティング施策が求められるはずです。このように、コンテンツマーケティングによって解決したい課題を絞り込み、明確化しておくことが大切です。
ペルソナを設定する
コンテンツマーケティングに取り組む目的が明確になったら、次に見込み客のペルソナを設定しましょう。見込み客の視点に立ってコンテンツを発信していくには、具体的なターゲットを定める必要があります。具体的な人物をペルソナとして設定することでターゲットが可視化され、コンテンツの方向性も定まりやすくなるからです。
ペルソナを設定する際には、自社の願望や理想とするユーザー像を掲げないように注意してください。実在する可能性の低いペルソナを設定してしまうと、誰にも響かないメッセージを発信してしまいがちです。誰もが容易にイメージでき、たしかに実在しそうなペルソナを設定する必要があります。
カスタマージャーニーマップを作成する
コンテンツマーケティングでは、見込み客の心理や行動を具体的に想定した上でタッチポイントを設計することが重要です。そのためには、見込み客の態度変容を段階ごとに整理し、各段階に適切なタッチポイントを設定する必要があります。
【見込み客の態度変容の例】
・認知:オウンドメディアを訪問し、記事を参照する
・検討:オウンドメディア経由で知った商品について、口コミサイトなどで調べる
・行動:LPから資料をダウンロードする・無料トライアルに申し込む
上記の例では、オウンドメディアの記事を読んで「参考になった」「よくわかった」と実感してもらうことが第一段階ですが、それだけでは見込み客の行動を促すことはできません。記事内の適切な箇所にCTA(Call To Action:行動喚起)を設置し、自社商品を認知してもらうための仕組みを用意しておく必要があります。カスタマージャーニーマップは、どの段階でどのようなCTAを設置すべきかを検討する上で重要な役割を果たすのです。
コンテンツリストを作成する
カスタマージャーニーマップを元に、見込み客の態度変容を促すために必要なコンテンツをリスト化していきましょう。まず大きなテーマを決め、テーマを細分化していくことでコンテンツの方向性を決めていきます。小テーマごとに検索キーワードや関連キーワードをリサーチし、各コンテンツのタイトルなどを一つひとつ検討していくのです。
コンテンツリストは、中長期的な運営を見据えてできるだけ多く確保しておくことをおすすめします。考案可能なコンテンツが不足するようなら、大元のテーマが狭い範囲に限定されていないかチェックしてみてください。テーマの裾野を広げることで、関連のあるコンテンツを増やしていくことができるはずです。
KPIを設定する
コンテンツ制作に入る前に、メディアの運営フェーズに応じてKPIを設定しておくことが大切です。たとえば、立ち上げ当初はコンテンツ制作数や公開数をKPIに設定するとよいでしょう。ある程度のコンテンツ数が確保できた段階で、資料ダウンロード数や問い合わせ件数などをKPIに設定することをおすすめします。
具体的な目標を決めておくことによって、運営が順調に進行しているのか、解決すべき課題はどこにあるのかが見極めやすくなります。長期間にわたって運営していくことを見越して、フェーズごとのKPIをあらかじめ決めておくのがポイントです。
コンテンツを制作する
コンテンツリストとKPIの設定が完了したら、計画に沿ってコンテンツ制作を進めていきましょう。制作したコンテンツを順次公開し、ユーザーの反応を見ながら改善を繰り返し、PDCAを回していくことが大切です。
なお、制作したコンテンツは複数のメディアで繰り返し活用していくと効率的に運営しやすくなります。たとえば、オウンドメディアの記事として制作したコンテンツを抜粋してメルマガやSNSに活用していくことで、より多くのリード獲得につながるでしょう。
コンテンツマーケティングに取り組む際の注意点
コンテンツマーケティングに取り組むにあたって、いくつか注意しておくべきポイントがあります。効果的なコンテンツマーケティング施策にしていくためにも、とくに次の3点を意識しながら運営していくことが大切です。
中長期にわたる施策となることを前提に考える
コンテンツマーケティングは短期的な成果を追い求めるための施策ではなく、あくまでも中長期にわたってじっくりと取り組むべき施策です。相応の期間と予算をあらかじめ確保し、時間をかけて取り組む構えで計画を立てておく必要があります。
決裁権をもつ人物が、コンテンツマーケティングの特性や取り組むメリットを理解しているかどうかも重要なポイントとなるでしょう。社内提案を行う際にはコンテンツマーケティングの特徴やメリットも含めてプレゼンを実施し、中長期にわたる施策として適切な予算を確保してもらうことが大切です。
コンテンツ制作・メディア運営の体制を整える必要がある
コンテンツマーケティング施策を中長期にわたって継続するには、コンテンツ制作やメディア運営に必要な人員を確保することも重要です。担当者や担当チームを決め、現実的に運営を続けられる体制を整えておく必要があります。
コンテンツマーケティングの専属チームを設立するのが理想ですが、実際には運営チームのメンバーが他の担当業務と兼務するケースも多いでしょう。その際には、他業務との兼ね合いを考慮して無理なく兼務できるかどうかを慎重に判断する必要があります。他業務が忙しくなり、コンテンツマーケティングに関する業務が手薄にならないように注意してください。
コンテンツ公開後の分析とブラッシュアップを継続する
コンテンツを順次公開しつつ、公開済みのコンテンツのブラッシュアップを図りましょう。反応の良いコンテンツとそうでないコンテンツに差が見られるようなら、反応が良い原因と反応が芳しくない原因をそれぞれ分析しておく必要があります。その上で、記事のリライトやCTA設置位置の再検討などを行い、試行錯誤を繰り返していくのがポイントです。
見込み客の反応しだいでは、コンテンツの方向性を見直すケースも出てくるでしょう。その際にはカスタマージャーニーマップの段階から見直し、タッチポイントの設計を再検討することが大切です。コンテンツを公開したまま放置するのではなく、効果を検証しながらブラッシュアップを継続しましょう。
まとめ
コンテンツマーケティングは、見込み客の態度変容を促し、継続的に顧客育成に取り組む上で重要な施策といえます。一方で、短期的な成果が期待できる施策ではないことから、中長期的な運営を見据えて体制を整えておくことが重要です。
今回紹介したポイントを参考に、自社にとって最適なコンテンツマーケティング施策を検討してみてください。見込み客にとって役立つ情報が蓄積していくことによって、将来にわたって自社の魅力を発信し続けられる強力な施策となるはずです。